2018年2月28日水曜日

仮想通貨と“億り人”

“億り人(おくりびと)”~何とも不気味な言葉が流行るものです。ビットコインに代表される仮想通貨やFX(外国為替証拠金取引)の激しい値動きに便乗して短期間に1億円ものお金を手にした人々のことをこう呼ぶそうです。この言葉の語源は2008年に封切られた日本映画「おくりびと」から採られていることは想像に難くありません。一言でいうと本木雅弘(もっくん)演じる若者があることをきっかけに納棺師になるお話です。そこでは死が真っ正面から取り上げられています。
そうしたいわば不吉な言葉を投機でにわか成金になった自分自身に対し嬉々として冠するのが私には不気味。果たしてビットコインはあっという間に暴落し、ネット上では自身の破産、破綻の程度がいかに大きいかを自慢げに書き込みする記事や動画であふれかえっています。
一朝にして天文学的な額の追証に追いかけられる“億り人”たち。彼らの年齢は見たところ20代~40代の若者です。そして破綻しかけている取引所の社長もこれまた幼さがまだ残っている20代の青年です。
もとより仮想通貨の複雑な仕組みなど理解できず、なぜ価値が発生し価格が上下するのか、そのメカニズムが全然分からない私のような時代遅れの人間にとっては、数百億円が一瞬にして溶けてしまったらしい今回のコインチェック事件について語る資格はありません。
しかし似たような話はこれまでも繰り返しどこかで聞いたことがあるような気がします。三島由紀夫の小説「青の時代」(1950)は実際にあった事件を題材にした小説。戦後の混乱期に秀才青年が高金利の闇金融会社を作りやがて破滅する話です。
「ライブドア事件」も同じ系列の事件でしょう。その後国政に打って出ようとした主役のホリエモンの行動のいっさいが私には今も謎ですが、いずれの事件も優秀な若者が決定的な役割を演じています。

本来若者には既存の価値観に縛られず高く自由に飛翔しようとするほとんど本能的な性行があると言っていいでしょう。失敗するかもしれないからといって青春の野心や野望を実現しようとする若者の行動を非難することは誰にもできません。しかしひとつだけ覚えておいてほしい、“億り人”が次の日にはあっけなく“送られ人”になってしまうことを。

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