2019年5月22日水曜日

ミズナ

子どものころ近所のお年寄りが畑で採れた大きなミズナをよく届けてくれました。いまどきスーパーで売っているような細長くてきゃしゃなものではなくミズナ1株の大きさがよく太った白菜ぐらいある、ずしりと重たい代物です。
母はそれを縦横十文字に切り分け、まずは煮物にしていました。アゲやクジラといっしょに煮込んだミズナは子どもにとっては苦手だった記憶があります。残ったミズナは漬物にして食べていましたが、これはしみじみおいしい! きっとミズナにはグルタミン酸が多く含まれているのではないかと思います。現在でも京都の老舗漬物店ではミズナやミブナは定番の人気商品ですね。
ちなみにミズナとミブナは植物分類学的にはほぼ同種です。葉の切れ込みが深いのがミズナ、葉に切れ込みのないのがミブナですが、ミブナはもっぱら漬物用に栽培されているようです。これに反し素朴な伝統野菜の代表選手だったようなミズナが近年のサラダブームで生で食べるのが流行し、今では煮食い、漬物だけでなくレストランやカフェでも必須の野菜アイテムに出世しました。
そんなミズナを私も昨年秋に家の畑で栽培してみました。秋に種をまき、20センチぐらいまで育ったら、大きいものから順番に間引いてサラダに入れます。やがて10月中旬になると、新たに畑をよく耕して元肥を施し、適当な間隔を空けて定植します。真冬が到来するころにはかなりの大きさの株になり、なべ料理や浅漬けに重宝します。
3月、白菜が終わるころがミズナの収穫のピーク、やがて花が咲き、5月には種が実り枯れていきます。晴天続きの今日、種がぎっしり詰まったミズナの花穂を採取し、種を取りました。ミズナとかミブナのような伝統野菜の種は固定種なので、自分で採った種を再びまいてもほぼ親と同じものができるので、種まきごとに種を購入する必要はありません。
さて本日収穫したミズナの種は400mlという途方もない量でした。秋に畑にまくのは10ml程度、約2000粒。ということは40年分の種があることに! 種にも寿命があるのでそんなに長期間保存する意味はありませんが、ミズナという生命のカプセル(種子)のひとつひとつが立派な野菜に育つことを夢見て、ビンに詰めて、冷蔵庫の野菜室に入れました。

2018年10月に定植したときの様子

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