2019年7月11日木曜日

うつ病の由来

 科学史上の新発見、新説はときに我々の人生観までひっくり返すことがあります。数年前イギリスのサイエンス誌に発表されたある論文によると現生人類にはネアンデルタール人のDNAが混入していて、そこからうつ病、たばこ依存など12種類の疾患がもたらされたとのことです。
50年前大学で心理学を専攻していたころ、うつ病は原因別に外因性、内因性、心因性の3つに分類されると教わりました。外因性とは脳腫瘍やケガなど原因が「外」にあるものであり、心因性とは家族やペットの喪失など「気分(こころ)に原因があるもの、それらに対し内因性とは、「原因が内部にあってよく分からない」つまり本物のうつ病であると。
 現代ではもう少し精密な理論が展開されて上述のようなおおざっぱなことを言うと笑われるかもしれません。しかしうつ病はまるで流行病のように老若男女かまわずこの国の人々に襲いかかり国民病の様相を呈しています。事態は深刻です。私の狭い交友関係でもうつ病に苦しんでいる人は大勢います。しかも内因性というか原因がはっきりせず、効果的な治療法もない重症例が多いのです。
 いやなできごとがあった、ひどく悲しいことがあったという訳でもないのに、人はときどきどうしようもなく落ち込み無力感にさいなまれることがあります。とりわけ今のような梅雨真っ最中の季節には。生きる意味も感じられないし、生きるエネルギーも沸いてこない……。
 私は、こうしたときこそ悶々うつうつと落ち込んでいないで「調子が悪いのは自分のこころの持ちようが悪いからとか、努力が足りないからとかではない、うつ病っぽいのは自分の中にあるネアンデルタール人由来の遺伝子が騒いでいるせいなんだ」と開き直ればいい、とそんなふうに考えることにしました。

 アフリカ大陸で誕生したという現生ホモ・サピエンスはもともと明るい場所が好き。そこに暗い森の洞窟に住んでいたうつ病因子をもったネアンデルタール人との混血が起きたというのですから、梅雨空の下で過ごす日々が続くと、遠い祖先が過ごした陰気なヨーロッパの洞窟生活がこころの内側によみがえって、気分がさえないのは当然。内因性うつとは何のことはない、ご先祖様由来だったと思えば気が楽になりますね。

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